聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
(なんだ。ちゃんと会話できているじゃないか。イズミは笑っていて、俺も楽しい)

ホッとしたアーレスは、改めてもう一口食べた。

酸っぱいのに甘いという不思議な味だ。
普段の料理はチーズやソースといった舌に残るような濃い味が多いので、しっかり味はあるのに、後味がさっぱりするのは不思議な感覚だ。
上に乗っている黄色いソースっぽいものと合わせるとさらに違った味が楽しめる。

「これ、タルタルソースって言うんです。卵使ってますけど、大丈夫ですよね?」

「大丈夫とは何がだ?」

「アレルギーとか」

「アレルギーとは何だ? よくわからないが、うまいぞ」

いずみは呆れたような顔で、腰に手を当てため息をついたが、すぐにふふふと笑い出した。
その顔に一瞬見とれる。

(ああこの子は、笑っているほうがいいな。それに、城で会ったときのような華美な化粧や衣装よりも、素朴な衣装の方が似合ってる)

「かわ……」

「え?」

かわいい、と素で言いそうになって、アーレスは慌てて口を押さえた。

「アーレス様、大丈夫です? 気持ち悪くなったりとかしてません?」

「いや、大丈夫だ。うまい。イズミは料理上手なんだな」

「ありがとうございます。本当は醤油があるとよかったんですけど……」

「醤油?」

なんだそれは、と言おうとしたところで、食堂の扉が勢いよく開いた。

「嬢ちゃん! なんだこれは!」

「ジョナスさん! 元気になったんですか」

「ジョナス、いたのか。具合が悪いんじゃなかったのか」

礼儀をどこかに置いてきた様子で食堂に飛び込んできた彼は、皿に変わった茶色の物体を乗せている。
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