聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
「あー、コロッケ食べたんですか? 病み上がりで揚げ物、大丈夫でしたか」
「嬢ちゃん、これはどうやって作ったんだ!」
唾が飛びそうな勢いでいずみに詰め寄るジョナスを、アーレスは首根っこを捕んで離した。
「落ち着けジョナス。彼女は嬢ちゃんではない。イズミだ。もしくは奥様と呼べ」
そこか?というような顔で見られて、アーレスは一瞬怯む。
(いやしかし、大事なことだろう。この屋敷の女主人だぞ? もう少し敬って接してやって欲しいじゃないか)
釣り上げられた状態のジョナスがやがて苦しそうに咳き込んだので、慌てて話してやる。
「うー、死ぬかと思いましたぞ、旦那様」
「悪い。つい。だが、イズミは俺の妻だ。嬢ちゃん呼ばわりは困る」
「いいですよ、アーレス様。好きなように呼んでもらえれば」
「いいってよ、旦那様」
いずみの仲裁にジョナスが乗って来たのでじろりとにらんでやる。
どいつもこいつも、この屋敷の主人が誰だか忘れているのではないか。
さすがに無言で睨まれるのは堪えたのか、ジョナスは咳ばらいをしてかしこまった。
「……分かりました。じゃあ奥様、これ作ったのはアンタだって本当か?」
「ほ、本当です。ジョナスさん気に入ってくれました?」
(アンタとは何だ、かしこまりきれて無いぞ。しかも、そのコロッケという代物は俺の皿には載っていない。ずるいぞ、ジョナス)