エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
それからというもの、拓海はいつにもまして一心不乱に仕事をこなしていく。
詳しい事情を知らない人から見れば、彼はいつもと変わらないように見えるかもしれない。
けれど日菜子からすれば、日に日にすり減っていく彼をじっと見ているだけしかできない自分にやきもきしていた。
一度ベストなものを作り上げた後に、それを越えるものを作るのは並大抵の苦労ではできない。そのうえ、今回はもうミスが許されないのだ。おそらく日々緊張の中で拓海はひとり闘っている。
少しは休むようにと声をかけたところで、「大丈夫だから」と言って聞く耳ももたない。
そんな拓海に心配そうな眼差しを向けていると、脇坂が目の前に立つ。
「これ、お願いできるかしら? そのくらい、わたしに言われる前に自分でさっさと片付けてくれない?」
「……え、はい」
渡された資料を確認する間もなく、彼女は身をかがめて日菜子にこっそり囁く。
「あなた疫病神なんじゃないの? だって南沢くんあなたとつき合いだしたとたん、こんなふうなトラブルに巻き込まれて。かわいそうね」
「……っ、それは関係ないと思いますけど」
まったく因果関係のない話だ。けれど今の日菜子にはダメージが大きい。
日菜子は胸元のネックレスの石をぎゅっと握りしめ、心を穏やかにたもとうと努力する。
「ほんとうにそう言い切れるの? いったいどこからデータが漏れたのかしら。怖いわね」
なんだか含みのある言い方に、日菜子は眉をひそめる。
「それは、どういう意味ですか?」
「別になんでもないわよ。ああ、南沢くんのアシスタント、わたしいつでも復帰できるから自分が力不足だと思ったら、早々に申し出てね」
相変わらず言いたい放題言い放ち、その場を去っていく。隣に花が在籍していたら、おそらくまたもや一触即発の火花を散らしたに違いない。
(わたしも言い返せたらいいんだけどな)
これはもう性格の問題なのでなかなか難しいが、それでも以前にくらべたら言いたいことを言えるようになったと思う。
こうやって変われたのも、拓海のおかげだ。
だからこそ彼が困っている今、なにか手助けができないものかと日菜子はずっと考えていた。
ひとつ思いついたことがあるのだが、今の拓海が素直に受け入れてくれるかが心配だった。