エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
「なにこれ?」
「おにぎりと、お味噌汁作ってきた。どうせなにも食べてないだろうと思って」
本当はもっとちゃんとしたものを作ろうと思った。けれどおそらくあまり時間がないことを考慮して、すぐに食べられるものを用意した。
「おお、サンキュー」
拓海が笑顔を浮かべたのを見て、少しほっとした。
彼は早速包みを開けると、うれしそうに大きな口をあけておにぎりを頬張る。給湯室でお茶を淹れて持っていくと、ひとつめのおにぎりを食べ終わったところだった。
「うまい。俺、おかかが一番好きなんだよ」
「そう、よかった」
お茶をデスクに置くと、日菜子も隣に座って食事をする拓海を見つめる。
(やっぱり、疲れてるよね。あんまり顔色がよくない)
でもそれを言ってしまうと、きっと拓海は強がるだろうからあえて言わない。
保温容器に入った味噌汁を飲み干した拓海の満足そうな顔を見て、日菜子は少しほっとした。
「うまかった、ありがとう。部長から話は聞いたんだろ? 心配かけたよな」
「……うん。でもわたしも部長も、南沢くんのこと信じてるから」
日菜子の言葉に拓海は頬を緩めたが、それも一瞬のことでその後また険しい顔をした。
「ありがとうな。先方には頼み込んでなんとか別の案を提出する了承を得たんだ。だからこのチャンスは絶対に無駄にできない」
「うん」
拓海がこの仕事をどれだけ成功させていたのか痛いほど伝わってきた。
「だから日菜子にも迷惑をかけると思う。いろいろと我慢させることになると思う。すまない」
「そんなこと、気にしなくていいのに」
今彼にとってなにが一番大切なのか、近くで見ているのだから理解している。彼のやりたいようにやらせてあげるのが、日菜子にとっても願いだった。
日菜子を見て拓海はふっと表情を緩ませた。
「少しだけ、抱きしめてもいいか?」
思ってもみなかった拓海の言葉に驚いたが、日菜子はなにも言わずにうなずいた。
拓海は椅子ごと体を日菜子の方へ向けると同時に、手をのばし彼女の背中に回した。そしてぎゅっと力を込める。
そしてまた日菜子も少し戸惑いながらも、彼の背中に手を回す。
お互いを確かめ合うように、抱きしめ合った。
拓海は日菜子の髪に顔をうずめるようにして、しばらくじっとしていた。言葉ではうまく慰めることができなかった日菜子だったが、こうすることで少しでも拓海の心が穏やかになるのであればそれでいいと思った。
朝日の差し込む誰もいないフロアで、ふたりはしばらく黙ったまま抱き合っていた。