エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
「デイキャンプ……なんだこれ?」
彼が不審がるのも無理はない。
「これ、うちの兄がやっている道場の子供達向けのキャンプなんだけど。一緒に行ってほしいの」
日菜子の兄も日本では名の知れた柔道家だった。競技の道を離れてからは、道場を開き後進を育てている。
「なんで、俺が?」
「ここ、よく見て。参加者は小学二年生以下。と、いうことは子供達がたくさんくるの。だからここで最近の小さい子供達はどんな事が好きで、どんなふうに過ごすのかを知ることができればいいかなって」
日菜子の考えは、拓海を実際に子供達とふれあわせることで、今行き詰まっているデザインに良い刺激が与えられるのではないかと思ったのだ。
「いきなり兄に会うことになって、申し訳ないとは思うんだけど」
「いや、それはいずれ挨拶に行こうと思ってたから構わないけど……そうか」
拓海は何か真剣に考えているようだった。
「お前も気づいているとは思うけど、デザインうまくってないんだ。絶対に失敗できないっていう気負いと、時間がないことへの焦り。正直ギリギリのところまできてる。もちろん卑怯な真似をしたやつに負けるつもりはない。だからこそ本当にいいものを作りたいんだ」
拓海の真摯な思いが日菜子に伝わってくる。日菜子は口を挟まずうなずくだけで、話を聞く。
「でも大事なこと完全に見失ってた。本当に大切なのは仕事を取ることでも、卑怯な相手に勝つことでもない。俺の作り出す空間で過ごす人達が心地良く過ごしてもらうことだ」
「拓海……」
彼は目を引くデザインを手がける一方で、その空間で過ごす人達のことを何よりも考えて設計する。それこそが彼のポリシーだと、一緒に仕事をしてきた日菜子はわかってる。
「気づかせてくれてありがとう、日菜子。キャンプの件、当日お兄さんには挨拶するけど、その前にお前から言っておいて」
「うん。わかった」
それまでどこかこわばっていた拓海の表情が明るくなった気がした。それだけでも日菜子はほっとする。