エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
 それでもやっぱり心細く、今日も緊張しながら出社したので、拓海が待っていてくれてうれしかった。

「当たり前だろ。それより今日はちゃんと飯食ったのか?」

「え......うん」

 ここのところめっきり食欲もなく、顔色も悪い。拓海は心配そうな顔で日菜子を見つめる。

 しかし彼の姿を見てそれまで怖くてしかたなかった心が落ち着いていく。

「ったく、放っておくと心配でたまならいな。ほら行くぞ」

 拓海は日菜子の手を引いてエレベーターに乗り込んだ。

 そこではじめて彼の姿に違和感を覚える。

「そのバックどうしたの? もしかしてもう帰るところだったの?」

 すっかり帰宅する準備が整っている。

「一度、会社から出たから――ほら、着いたぞ」

 エレベーターは設計部のある階に到着した。廊下こそは電気がついているがフロアは静かだ。

 普段ならばこの時間、まだまだ残業をしている人たちがいるはずだがフロアには人気(ひとけ)がない。

 様子がおかしいと思い足を止めた日菜子は拓海に目を向けると、彼は人差し指を唇に当てて静かにするようにと伝えた。

 日菜子がうなずくと拓海はゆっくりと歩き出す。彼の後に続いていくと灯りの消えたフロアの一角だけが青白く光っている。パソコンに電源が入っており、その前に動く人影が見えた。

「なにしてるんですか」

 拓海がフロアに向かって声をかけるとガタッと椅子の倒れるような大きな音がした。

「日菜子、電気をつけて」

「う、うん」

 なにが起っているのかわからないまま、指示通りフロアの灯りをつける。すると呆然と立ち尽くしている脇坂の姿があった。
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