エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~

「美味しかった」

「そうか。よかった」

 はじめは笑顔を浮かべた拓海だったが、急に真剣な顔になる。

 まとう雰囲気が変わったことに気がついた日菜子が彼を見ると、スーツのポケットから何かを取り出す。

 拓海がそっとテーブルの上に差し出したのは、部屋のカードキーだった。日菜子はそれを見た瞬間、彼に視線を移す。

「無理強いはするつもりない。まだつき合ってから日が浅いこともわかってる。でもそれでもあえて、朝まで一緒にいたいと俺は思っている。選ぶのは松風だ」

 まっすぐ自分を見据える目から、彼の行動の意味することも、彼が本気であることも伝わってきた。

 彼とともに夜を過ごすということそれがどういうことなのか、日菜子にもわかる。今ここで断ったとしても拓海は日菜子を責めはしないだろう。

(いきなりで驚いたけど……)

 いつかはそうなることを自分も望んでいた。相手は誰でもなく拓海が良い。そうとなれば断る理由などないのだ。

 なけなしの勇気を振り絞る。日菜子はゆっくりと下を向いたまま蚊の鳴くような声で答えた。

「わたしも、もう少し一緒にいたい……です」

 かぁっと体が赤くなる。恥ずかしくて照れ隠しにメガネのブリッジに手を伸ばし、自分がすでにメガネを卒業したことを思い出す。

 その代わりに髪を耳にかけようとしてふれた自分の耳が、今までにないほど熱くなっていた。



 支払いを済ませた拓海は、日菜子をエレベーターに乗せた。数階下の宿泊フロアに到着すると彼女の手を引き部屋に向かう。

 日菜子は緊張しすぎてされるがままだ。時折拓海の気遣うような視線を感じたけれど、自分の暴れだしそうな心臓をなんとか落ち着けることに必死でなにか返すようなことはできなかった。

 拓海がカードキーを開けて日菜子を先に中に入れる。部屋は暗いままだったが、その先にぼんやりと輝く光が見えて目を奪われる。

 LEDライト型のキャンドルが部屋の至るところに置かれていて、とてもロマンチックな雰囲気だ。テーブルにはバラの花とシャンパンを冷やすクアイスバケツが置かれている。

「これ……」

 振り向いて後ろに立つ拓海を見る。

「ベタな演出だけど、ほら座って」

 拓海は手を引いて日菜子を部屋の中に引き入れる。そのままソファに座らせると、隣に座った。

 夢のような出来事になんだか胸がいっぱいで、ふわふわと幸せな気分を味わった。そんな日菜子の隣で、拓海はシャンパンを開けてフルートグラスに注いだ。
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