エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
「いつまでもおしゃべりしてないで、さっさと仕事しなさい」
通りかかった脇坂が、日菜子と花をひと睨みする。言われたことも最もなので「すみません」と謝って仕事に戻ろうとした。
謝った日菜子に脇坂はニコッと笑った。
「随分幸せそうね。いつまで続くかしら?」
悪意の塊のような言葉に日菜子はショックを受けたが、脇坂がすぐにその場を離れたので、深呼吸をしてパソコンに向かう。
(そろそろ先方に着いたころかな?)
時計を見た日菜子は、拓海の契約が取れるようにと心の中で思いながら仕事に戻った。
数日後の午後。
昼食を済ませバタバタと仕事を進めていると、目の前の電話が鳴った。
「美星建設、設計部です」
『わかすぎ学園の総務部長をしております、狭山(さやま)と申します。南沢さんを至急お願いしたいのですが』
電話の相手は先日拓海が打ち合わせに向かった、保育園の建て替えの案件の依頼先だ。
しかし今拓海は、別のクライアント先で打ち合わせ中でありすぐに応対できそうにない。
相手の声色からして、急を要するように思えた。ここは部長に取り次ぎ判断を煽るのがベストだ。
日菜子は電話を保留にして、部長に事情を話し電話を取り次いだ。
部長はすぐに電話に応対する。席が離れていて声は聞こえないがその表情が険しく硬い。そこから良くない予感しかせずに、日菜子は仕事も手につかずに様子を窺っていた。
そうこうしていると、拓海が帰社してきて日菜子の元に来た。
「ただいま。松風あれできてる?」
荷物を持ったまま日菜子の席にやってきた拓海に、説明をしようとする。
「南沢くん、今ね――」
「南沢、ちょっといいか?」
声をした方を向くと、険しい顔をした部長が拓海を呼んでいた。
「え。はい」
部長のただならぬ様子に、拓海も表情をすぐに変えた。
「これ、悪いけど片付けといて」
渡された資料を受け取る。なにかひとこと声をかけようと思ったがとてもそんな雰囲気ではなく日菜子はなにも言わないまま拓海を見送った。
それから一時間弱。ミーティングルームから部長も拓海も出てこない。周囲も事情はわからないが、なにかが起きていることは察しているので皆が心配していた。
日菜子も仕事をしつつも、拓海と部長の話について気になり集中できずにいた。すると中からふたりが出てきて、そのまま拓海は出ていってしまう。
「なにかトラブルですか?」
隣で成り行きを見守っていた花も、さすがに黙っていられないようで最初に電話を受けた日菜子に事情を尋ねてきた。
「詳しいことはわからないんだけど……」
詳細はわからないので、憶測で下手なことは言えない。ごまかしていると「松風さん」と部長に呼ばれ、今度は日菜子がミーティングルームに呼ばれた。