エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
そこまで考えが及んでいなかった。どちらにしろ、今の我社の置かれている状況は芳しくないものだ。担当していた拓海はなおさら責任を感じているに違いない。
「あの、南沢くんは?」
先程怖いくらい深刻な顔をして出ていった。
「南沢は……とりあえず先方に謝罪に向かった。そして詳細を聞いて、もう一度うち
の案を検討してもらえるようにと話をしにいった」
「それって、難しい話なんですよね?」
「ああ、僕も同席できればよかったんだが、これから別件で出るからね。それを知っている彼は、ひとりで行くと言って聞かなかった」
「そうなんですか」
彼らしいと思うと同時に、ひとりで背負ってしまいそうな拓海を心配する。
「ただ先方と僕が電話で話をした感覚だと、向こうは南沢くんのことを大変気に入ってるらしい。だからきっと彼なら、いい方向に話を進めてくれるに違いないと僕は信じているよ」
顔面蒼白の日菜子を勇気づけるように、部長は肩をぽんと叩いた。しかしショックを受けた日菜子の心には重い石がつまっているようで、到底気持ちを浮上させることなどできそうになかった。
デスクに戻った日菜子は青い顔のまま、仕事を続ける。心配した花が話しかけてきたが「大丈夫だから」としか答えられない。
なんとか仕事だけはきちんとしようと、懸命にこなしていく。定時がすぎて、ひとりまたひとりと帰宅していくが、日菜子はずっと仕事を続けていた。
そうやって拓海が帰ってくるのを待ち続けた。
「なんだ、まだいたのか?」
「南沢くんっ!」
フロアの入り口に立つ拓海が、日菜子を見つけて驚いた顔をしている。
「大丈夫だったの?」
駆け寄る日菜子に拓海は笑顔を浮かべたが、そこには疲労の色が色濃く見て取れた。
「部長も後で合流して、一緒に謝罪をしてくれた。そのあと営業部で詳細を報告してたらこんな時間になってた」
「そうなんだ、お疲れ様」
「ああ、心配かけたな。すまない」
拓海の手が、日菜子の頭をポンポンと叩いた。安心させようという気遣いが伝わってきたが今、助けが必要なのは日菜子ではなく拓海のはずだ。
「今日は、もう帰るよね。一緒に……」
「いや、俺はやらなきゃならないことがあるから」