エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
拓海はデスクに向かうと、パソコンの電源をオンにした。
「今から? 明日でも……」
「悪い、今日は送ってやれない。気をつけて帰れよ」
疲れた顔で笑顔を浮かべる拓海を見ていると、胸が苦しい。今の日菜子には彼になにもしてあげることができないのだ。
「わかった。なるべく早く帰ってね」
きっとひとりになりたいのだろう。これ以上ここにいては彼の迷惑になってしまう。
日菜子は自分の無力を痛感しながら、フロアを出ていく。
最後に拓海の方を見たが、彼はすでに一心不乱に作業にとりかかっていた。
翌朝。
昨夜寝付きが浅く早く目覚めた日菜子は、いつもの時間よりもかなり早く職場に到着した。
朝早いせいで、フロアに到着するまで誰にも会わなかった。自分の予想がはずれていればいい、と思いながら扉を開く。
そしてフロアを覗いてため息をつく。
(やっぱり)
そこにはデスクで眠ってしまっている拓海の姿があった。デスクの上にはいくつものデッサン。
しかしどれも納得がいかないのか、中にはぐちゃぐちゃに塗りつぶされたものもある。
日菜子が帰ってからずっとひとり、ここでデザインを続けていたのだ。疲れ切った顔をして眠る拓海を見て胸が痛む。
しかしここは心を鬼にして、彼の肩を揺らして起こした。
「南沢くん、そろそろ起きないとダメだよ。南沢くん……」
声をかけるが、拓海は眉をひそめただけで目を開かない。
「もう……早く起きて。拓海」
会社で下の名前を呼ぶのはどうかと思い、いままで職場では一度も彼を『拓海』と呼んだことはなかった。けれど今は誰もいないのだ、そのくらいは許されるだろう。
「ん……ひ、なこ?」
寝ぼけた拓海も、日菜子の名前を呼びながら目をゆっくりと開く。
「起きた? おはよう」
心配していることを感じさせないように、なるべく明るい声で話しかける。
「ああ、朝か……うーん」
朝日の差し込むフロアに拓海が目を細め、大きく伸びをした。
「そう、もう少ししたらみんなが出社してくるよ。その前にこれ、食べて」
日菜子は小さな手提げバックを拓海に渡す。