あやかし神社へようお参りです。②
「……三門さんからさっき聞いた。中堂と三門さんってハトコ同士なんだってな! びっくりした、中堂も妖とか見えるんだなって。いずれは結守の巫女になったりするんだろ!?」
あからさまに空回りの元気なのは分かっていた。けれどそれに触れれば富岡くんがもっと傷付くような気がして、気が付いていないふりをした。
「私もびっくりした。昨日、突然裏の社に運ばれてきたんだもん。それに学校では雪ちゃんが「富岡くんが家に帰ってない」って不安がっているし」
「はは、急にこんな風になっちゃったからさ。家には帰れないし、でも行くところもないし。裏山で休んでたらどんどん気分が悪くなってきて。それで、ふと三十年くらい前に、ここの電話教えてもらってたの思い出して。変わってないんだな」
私たち人間にすれば途方もない三十年という数字を、何気なく口にした富岡くん。それは彼が私たちとは時間の流れが違う生き物であるという証でもあった。
「────俺、もうこっちの世界には二度と来ないつもりでいたんだ。今度こそ、意地でも人間として生きてやるって」
絞りだされた小さな声は、湿ってわずかに震えている。
「でも、無理だったみたい。結局はいびつな生き物だから」
布団の上に雫が落ちる。春の雪解け水のように、澄んだ涙だった。