あやかし神社へようお参りです。②
「そういう妖なんだからお前がくよくよしたところで仕方がないだろう。雪童子と同じような妖はごまんといる。それに死ぬわけではないのだから、騒がなくとも良い」
黄昏時、まだ裏の社が開く前の社頭はとても静かだった。
鳥居に続く石階段に座って膝を抱えていた私に、みくりは淡々とそう言った。ふくりが心配そうに私を見上げる。情けない顔で微笑み返した。
「動揺するのは分かるけれど、こればかりは天命だからね。雪童子もそれはちゃんと分かっているはずさ」
「……富岡くんは、溶けた後どうなるの」
「どうもならないよ。水になって常世を漂って、また寒い吹雪の日にどこかの積雪から生まれてくる」
「富岡くんとして過ごした記憶は」
「そのままさ」
良かった、と息を吐いた。何もかも忘れてしまうわけではなかったんだ。
みくりがフンと鼻で笑った。
「良いものか。雪童子が次に生まれてきたときには、自分と同い年だったはずのお前たちがしわだらけのの老人になっていて、自分のこともすっかり忘れているんだぞ」
「確かに年老いたら忘れるかもしれないけれど」
「そうじゃない。妖は人間の記憶には残らないんだ」
え、と聞き返す。ふくりが嗜めるようにみくりの名前を呼んだが、みくりは相変わらずそっぽを向いて丸まっていた。
どういうこと、とふくりに問いただす。
ふくりは困ったように視線を彷徨わせた後、そっと私を見上げた。