あやかし神社へようお参りです。②
「そのままだよ。妖は、人間の記憶に残りにくい。理由は私たちにも分からないけれど」
「でも、でも私は富岡くんのこと覚えてるよ。葵も多聞も、ケヤキも。みんな覚えてる」
それはお前がこっち側に近い人間だからだよ、みくりが欠伸をこぼしながら言う。
でもだって、そして言葉に詰まった。
良かったなんて嘘だ。
富岡くんにとってこれほど悲しいことがあるだろうか。彼は私たちと過ごした記憶があるのに、私たちは彼と過ごした記憶がなくなってしまう。それだけじゃなくて私たちだけが年老いて、彼はそれを眺めながらまた若返るんだ。
自分だけが成長しない、自分だけが忘れられるそんな世界。考えるだけでも、胸が痛い。切なさが遣る瀬無く沸き立ってきた。
「おい麻、雪童子のことを想ってやっているなら、余計なことはするな。下手に人への執着心を持たせれば、苦しむのは雪童子だ」
私に釘を刺したみくりは一つ伸びをして立ち上がる。つられるように視線をあげれば、遠くの空にうっすらと月が見える。もう少しで裏の社が開くのだ。
ふくりを抱き上げてその柔らかい体に顔を埋める。
「私だったら耐えられないよ、ふくり」
「それは麻が人間だからだよ。妖は、うんと長く生きるから」
「妖でも、人と同じように感情をもっているでしょう。富岡くんだって、辛くないわけじゃないと思う。きっと苦しさに慣れてしまったんだよ」
優しい子だね、と目を細めたふくりが私の頬にすり寄った。