しあわせ食堂の異世界ご飯4
 それでも好きだと思うことができないのなら、無理に食べなくていいとリズは考えたのだ。
「卵焼きなら、甘くて美味しいよ」
「……そうなの? ここではカレーしか、食べたことない」
「じゃあ、食べてみて。アリアお姉さまの作る卵焼きは、甘くて、飛び上がっちゃうほど美味しいんだよ」
 カレーみたいに、ちょっとの辛さもないから安心してねと、リズは微笑みかける。どうにかして、泣いてしまった女の子を元気づけてあげたい。
 リズはアリアに頼んで、卵焼きを作ってもらおうと立ち上がる。しかしそれより先に、「お待たせしました」と優しい声が頭上から降ってきた。
「卵焼きです」
「「え?」」
 リズと女の子の声が重なって、ぱっと声の主を見る。
「アリアお姉さま!」
「ごめんね、厨房まで聞こえてきたから。急いで卵焼きを作って、持ってきたんだ」
 アリアができたての卵焼きをテーブルに置くと、女の子は目を瞬かせてそれを見る。瞬きをするたびに大粒の涙が落ちたけれど、それはすぐに収まってしまった。
「黄色い……」
 ぽつりと呟いた女の子の声を聞き、リズは笑いながらフォークを手渡した。
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