しあわせ食堂の異世界ご飯4
 仕事が終わった人たちは家で団欒をしているか、酒場で盛りあがっているかのどちらかだろうか。
 もし叶うならば、自分も可愛い娘や家族に会うため、早く屋敷に帰りたい――そう、切に願いたくなってしまう。

 仕事を切りのいいところまで仕上げたライナスは、ぐぐーっと背伸びをして首を回す。時計を確認するまでもなく、いい時間だ。
 ……が、机の上にはまだ書類がどっさり載っていて、帰るのはまだ先になってしまうだろう。
 ため息をつきたいのをぐっと堪えて、ライナスは飲み物でも――と思ったところで、サイドテーブルに置いていたものの存在を思い出す。
「ああ、そうだ。アリアさんが軽食を持たせてくれたんだった」
 夕方ごろに食べようと思っていたのだけれど、すっかり仕事に夢中になって忘れてしまっていた。
 ライナスが苦笑しつつそれを手に取ると、同室で仕事をしていた部下がこちらを見た。
「食事ですか? 毒味をいたします」
「いや、その必要はないよ。二個入っているから、ルシオも一緒に食べよう」
 さも当然のように言う彼に、ライナスはゆっくり首を振る。そして取り出した軽食を、部下――ルシオに差し出した。
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