しあわせ食堂の異世界ご飯5
 けれど、リズとしては不慣れな王城でひとりにされてしまうのは落ち着かない。
「もうすぐお仕事も終わるでしょうから、お菓子を食べながら待ちましょう」
「そうですね。わたしが我儘を言って、お父さまを困らせてしまうわけにはいきませんし……」
 しぶしぶながらも、リズは頷いてクッキーに手を伸ばす。
 ひと口食べて、これならアリアの作ったお菓子のほうが美味しいのになとしあわせ食堂のことを考える。
 それが顔に出ていたのだろう、侍女に「お口に合いませんでしたか?」と確認されてしまった。
「いえ、美味しいですよ?」
「でしたらよかったです」
 ただ、アリアの料理がこの世界では飛び抜けて美味しすぎて、リズの舌が肥えてしまっただけなのだ。
 もしかしたらもう、アリアの料理なしでは生きていけなくなってしまったかもしれない。それほどまでに、リズはアリアの料理の虜になっていた。

 しばしのんびりした時間を過ごしていたリズだったが、ふいに視界に入った人物ふたりに視線が釘付けになってしまった。
「……!?」
< 133 / 181 >

この作品をシェア

pagetop