しあわせ食堂の異世界ご飯5
 いったいどういうことだと混乱していると、それに気づいた侍女も視線を動かした。そして簡単に、その答えを口にした。
「リベルト陛下と側近のローレンツ様ですね。どうしましょう、ご挨拶に――リズベット様!?」
 侍女の言葉を聞き終える前に、リズは椅子から降りて、近くの木の陰へと隠れる。その様子に慌てたのは、もちろん侍女だ。
「リズベット様、そんなはしたないことをなさらないでくださいませ!」
「しぃっ、少し黙って!」
「…………」
 しゃべっているとリベルトにばれてしまうかと思い、リズは侍女に注意する。そして木の陰から、こっそりリベルトとローレンツを見た。
(リントお兄さまと、ローレンツお兄さま……ですよね?)
 侍女がはっきりローレンツの名前を出したので、そちらは間違いないだろう。そしてもうひとり……リベルトとリントは名前が違うけれど、その顔立ちは同じ。
(リントは、皇帝陛下の偽名だったということ……?)
「ねぇ、あの方が皇帝陛下で間違いはないの?」
「それはもう、間違いありません。おふたりのお顔を知らない方は多いですけれど、貴族の令嬢や侍女たちの間では人気なんですよ」
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