執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~

 実家のある関西から東京の伊野瀬コーポレーションへ就職するために引っ越し、周りはだれも自分を御曹司だと知らない環境で働き始めた。


 そして、まどかに出会った。

 初めて彼女を見た瞬間、夏の日差しのような明るくてきれいな女の子だと思った。
 外見だけではなく表情や仕草や声、すべてに嘘や打算がなく自然体な彼女に好感を持った。

 周りを気遣い面倒な仕事もいやな顔ひとつせず率先して引き受ける。人の気持ちを汲み取り先回りして動けるのに、自分に向けられる好意には鈍感。

 そんな危なっかしい彼女をいつの間にか目で追い、気に掛けるようになっていた。

 華奢な肩とか、細い手首とか、さらりと流れるきれいな髪とか。小さな光の粒がはじけるような笑顔とか、瀧内くんと呼びかける声とか、仕事中に見せる真剣な横顔とか。

 なにかひとつ見つけるたびに、胸の奥があたたかくなる。降り積もるように少しずつ、まどかへの好意が増えていく。
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