執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~
「でも、名字が違うよ?」
「社長の娘の子供でいわゆる外孫だから、名字が違って当然だろ。瀧内と同じ大学に通ってた知り合いから聞いたんだ。あいつは学生時代『俺は伊野瀬コーポレーションの御曹司だ』ってまわりに自慢してまわってたって」
「嘘……」
雅文が社長の孫だなんて、聞いてない。そう言い返そうとしたけれど、今までのふたりの会話を思い返して言葉につまった。
彼は自分が御曹司だとは言っていなかった。一般的な普通の家庭で育ったと言っていた。
だけどその一方で、高級そうな車に豪華なマンション。彼が十八歳のときにまとまったお金を貸してくれたという豪快な祖父の話。どれも、彼が社長の孫だというなら納得できる。
「おかしいと思ったんだよ。営業統括部でいきなりトップになってちやほやされて、専務の息子の俺を差し置いてアメリカ赴任の話まで出てさぁ。なんであいつだけそんなに優遇されるんだよって思ってたら、実は御曹司でした、だって。そんな話を聞いたら、まじめにやってる俺らがバカみたいじゃん」
乱暴にそう言い捨てた田端くんは、同意を求めるように「腹が立つよな?」とこちらを見る。
「でも、雅文は自分が御曹司だなんて、そんなこと言ってなかった……」
「雅文って。お前瀧内のこと名前で呼んでるんだ?」
田端くんの言葉で、自分が雅文を名前で呼んでいたことに気付く。はっとして手で口を押えると、田端くんがにやにやと笑う。