執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~
口では付き合おうなんていいながら、田端くんが私に向けているのは、好意ではなく悪意や敵意だ。
なんだか怖い。本能的にそう感じる。
不安と恐怖で胃のあたりがキリキリと痛くなる。
「冗談はやめて」
取り繕うようにそう言って私は椅子から立ち上がった。
すると田端くんは、「冗談じゃないって」と私の腕をつかもうとした。
触れられたくないと思いとっさに身を引くと、足元にあった自分のバッグにぶつかった。
中身が音をたてて床に散らばり、慌ててしゃがんで中身を拾う。
あぁもう。ボールペンがあんな遠くにまで転がっている。
ため息をつきながらあちこちに散らばったバッグの中身を拾い集め立ち上げると、田端くんは私の手帳を持っていた。
バッグから飛び出したのを拾ってくれたんだろう。
「あ、拾ってくれてありがとう」
お礼を言って手を出すと、田端くんはこちらに手帳を差し出しながら意味深な笑みを浮かべていた。