妖狐の瞳に恋をした
私の言葉が分かるかのように、不思議と狐は歩みを止めた。

「ケガをしてるんだよね。手当をしたいだけだから、少し見せて」

狐は一瞬考えるようにしていたが、私の下へ一歩一歩と近づいてきた。

「ケガを見せてね。ちょっとだけ、お水で洗うね」

バックの中に入れてあったミネラルウォーターを取り出し、狐の

足にかけると、血が中から滲み出てくる。

噛み痕のようにも感じる、犬にでも噛まれたのかもしれない。

「・・何もないよりはいいよね・・・」

ハンカチを狐の傷口に巻き結ぶ。

傷口から目線を上げると、私のことを見ている狐の目と私の目が

重なった。

引き込まれそうな程深いエメラルドグリーン・・・

まるで翡翠(ヒスイ)のようだと思った
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