妖狐の瞳に恋をした
「蘇芳様がお着きになりました。」

「通せ」

襖が開くと、がっしりした体格の白髪の人が立っていた。

歳の頃は40代位に見えた。

「牛鬼にやられたとか?」

「あぁ、ちょっと油断した」

「傷を見せてもらおうか」

「あぁ」

翡翠はそう言うと、着物を開け背中をこちらに向けた。

「ッッ!」

背中には大きな爪痕が右肩から左の腰にかけてついていた。

こんなに酷いケガだったの!?驚きで声も出なかった。

それと同時に翡翠が生きていて良かったと、改めて思った。

「これは爪に毒でも仕込んでいたか・・・」

蘇芳さんが、翡翠の傷に右手をかざすと青白い光がポッとともると

次の瞬間には痛々しかった爪痕の傷が綺麗に消えていた。

「す、凄い・・・」

「毒は抜いた、これでもう大丈夫だろう」

「助かった、礼を言うよ」
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