real feel
もうそろそろ、腕を離してくれてもいいのに。
ずっと同じ体勢のままで私の話をじーっと聞いていた課長が、やっと口を開いた。
「蘭さんって本当は情が深くて心が温かい女性だったんだね。俺は君の本質ってものをまったく分かっていなかったんだな。今更ながら、本当に俺は道を誤ったんじゃないかって気がしてきたよ。……俺は今でも美里のことを愛してる。そのことから目を背けようとしてきたけど、それじゃダメだってことに気が付いた。蘭さんから諭されて、目が覚めたよ。美里に会いに行く。そしてもう一度やり直せるように話し合うことに決めた」
ああ……。
やっとその気になったんだ課長。
よかった、肩の荷が下りたような気になった。
これでようやくここから脱出できそうで、心底ホッとしていた。
「あの、課長、この腕を……」
「なぁ、蘭さん」
『離してください』って言いたかったのに、遮られてしまった。
「君の言う通りに、美里に会いに行って話し合うつもりだけど」
…………だけど、何?
掴まれている腕から目を離せないまま、黙って次の言葉を待った。
その時、シーンと静まり返る資料室の入り口の方がザワザワと騒がしくなったような気がした。
ガチャガチャガチャとドアを開けようとしているけど、ノブが空回りしているらしい。
その後、少し間を置いてから今度は激しいノックの音が響いてきた。
『おい、誰かいるのか!聞こえたら返事をしてくれ!おい聞こえるか?俺だ佐伯だ!蘭さん、そこにいるのか!?いたら返事をしてくれ!!』
翔真!
私がココにいること、誰かに聞いたの?
早く翔真の元に行きたくて入り口の方に駆け出そうとするけど、私の腕を掴む課長に阻まれてしまう。
『離して!』
今度こそそう言って振り切りたかったのに。
『頼むから静かにしてくれ!騒ぐんだったらみんなどっかに行ってくれ!!』
遠くで聞こえる翔真の怒鳴り声を、私は課長の腕の中で聞く羽目に……。
ずっと同じ体勢のままで私の話をじーっと聞いていた課長が、やっと口を開いた。
「蘭さんって本当は情が深くて心が温かい女性だったんだね。俺は君の本質ってものをまったく分かっていなかったんだな。今更ながら、本当に俺は道を誤ったんじゃないかって気がしてきたよ。……俺は今でも美里のことを愛してる。そのことから目を背けようとしてきたけど、それじゃダメだってことに気が付いた。蘭さんから諭されて、目が覚めたよ。美里に会いに行く。そしてもう一度やり直せるように話し合うことに決めた」
ああ……。
やっとその気になったんだ課長。
よかった、肩の荷が下りたような気になった。
これでようやくここから脱出できそうで、心底ホッとしていた。
「あの、課長、この腕を……」
「なぁ、蘭さん」
『離してください』って言いたかったのに、遮られてしまった。
「君の言う通りに、美里に会いに行って話し合うつもりだけど」
…………だけど、何?
掴まれている腕から目を離せないまま、黙って次の言葉を待った。
その時、シーンと静まり返る資料室の入り口の方がザワザワと騒がしくなったような気がした。
ガチャガチャガチャとドアを開けようとしているけど、ノブが空回りしているらしい。
その後、少し間を置いてから今度は激しいノックの音が響いてきた。
『おい、誰かいるのか!聞こえたら返事をしてくれ!おい聞こえるか?俺だ佐伯だ!蘭さん、そこにいるのか!?いたら返事をしてくれ!!』
翔真!
私がココにいること、誰かに聞いたの?
早く翔真の元に行きたくて入り口の方に駆け出そうとするけど、私の腕を掴む課長に阻まれてしまう。
『離して!』
今度こそそう言って振り切りたかったのに。
『頼むから静かにしてくれ!騒ぐんだったらみんなどっかに行ってくれ!!』
遠くで聞こえる翔真の怒鳴り声を、私は課長の腕の中で聞く羽目に……。