real feel
「そうだったのか。それで宮本課長と高柳が話し込んでいたんだな。俺には知らされてなかったけど、正直ホッとしてる」

私も同じ。
1ヵ月の間は、主任と高柳さんのことを勘繰ったり心配したりしないですむ。
主任のことを信じていない訳ではないんだけど、一緒の部署で仕事してるなんて、やっぱり嫌だ。

「それに、まひろが広報から離れるってことは、迫田からも離れるってことだからな。いい傾向だ」

「迫田さん?関係ないじゃないですか。もしかして、妬いてるんですか」

「ばっ、バカ言うな。用心には用心を重ねるもんなんだよ。さ、行くぞ」

私が手で弄んでいた伝票をサッと奪い取ると、さっさと会計に向かう主任。

「あっ、待ってください!たまには私が……」

今日くらいは私に奢らせてもらおうと思っていたのに、スマートかつスピーディーに会計を済まされてしまった。

「年下の彼女に奢られるなんて、格好つかねーよ。お前は黙って俺に奢られてればいいんだよ」

「……おごちそうさまでした、主任」



車で送ってくれるのかなって思っていたけど、どうも家に向かう道じゃないようだ。

「主任、これから何処かに行くんですか?」

「んー?まだ時間あるだろ、まひろ。門限何時だっけ」

「今日は平日だから23:00ですけど」

そう、まだ2時間くらい大丈夫。

「ここ人気もない穴場で気に入ってるんだ」

車を20分ほど走らせてやって来たのは夜景が見えるらしい展望台と、そう広くはない駐車スペースのあるところ。
夜景を見に来たのかとおもったけど、そうでもなさそう。

「1人でドライブするときの休憩スポット」

へえ1人で……。
その言葉を真に受けていいものかどうか。
こんなときまで元カノの存在がちらつくなんて、私はどんだけ嫉妬深いのか……。

「高柳さん、広報で上手くいくといいですね」

「は?高柳なんてどうでもいいだろ。俺はお前が心配なんだよ」

心配なのは、私が頼りないから?

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