real feel
さっきファミレスで嬉しいことを言ってもらったばかりなのに。
でも、迫田さんに妬いてくれてるのかと思ったらそうでもなさそうだし、私ばかりが元カノに嫉妬してるなんて不公平な気がしてきた。

あ……。
私に元カレなんて存在しないけど、もし対抗できるとすれば。

「さっき、私の素顔を知るのは主任だけって言ってくれましたけど。実はイチにぃやシュウにぃも、知ってるんですよね。だって小さい頃からずっと一緒に……」

ガタン!

あまりに突然で、何が起こったのか直ぐに把握できなかった。
私の身体は後ろに倒された状態で、シートを主任が倒したんだと気付く。
そしてそんな私に覆い被さるようにして、じっと真っ直ぐに見下ろしてくる主任。

「あ、あの……」

開きかけた私の唇は、主任のソレで熱く塞がれてしまった。
いつも優しいのに、今日のキスは荒々しく情熱をぶつけられているようで、早くも息が続かなくなる。

「んっ……」

激しく動く唇と舌の微かな隙間から漏れるのは、とてつもなく甘い吐息。
苦しくて離そうとしても離してはくれない。
絡み合う舌は、もうどっちがどっちのものか解らないくらいに溶け合っているよう。

……どれくらいの間、お互いの唇を求め合っていたんだろう。
息を吐くことさえも忘れて夢中になっていた。
名残惜し気にゆっくりと私の唇を食んでから、そっと離れていった主任の唇をただ茫然として視線で追いかけた。

「……ほら、そういう顔」

「………え?」

「潤んだような蕩けた目をして、男を誘うような女の顔をしたお前を、イチにぃは知らないだろ?俺は嫌と言うほど知り尽くしてる。だから俺だけでいいんだ。解ったか?」

「は、はい。分かりました、主任」

「分かればいい。お前も俺だけを知っていればいい」

やっぱり、嫉妬してくれたんだ。


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