【完】俺様彼氏は、甘く噛みつく。

三限終わり、先生に起こされた。


「睡眠も大事だけど一日三食しっかりたべること! ねっ! さぁほら、行きなさい!」


「先生、寝起きにその高い声きつい。可愛い顔してんだから、もっと優しい声で頼んでよ」


「か、かわ……っ」


慣れてなさすぎ。

前は結構面白かったけど、なんか今は今宵だけでいいかな。


……つーか。

今宵に会いたいんですけど。


昼休みが始まってすぐ、俺の教室に今宵が現れた。
  
「あれ?どうした?」

「……あ、あの。”会いたかった”って駆くんの字が書いてあったから」


俺の字わかるんだ。

もじもじと俯き気味の赤いほっぺ。


「なんでか分かんないけどすげー会いたかった」


「……っ」


恥じらいたっぷりのその顔。俺だけのものにしときたいから。


「一緒に昼飯たべよ」

「あ……うん!じゃあえっと、着替えてくるね」


体操着の姿の今宵は慌てて踵をかえす。


「なんで体操着?」


低めのツインテールがふわりと揺れて、俺に振り返った。


「さっき選択授業で、書道だったの」


「へぇ」


書道。今宵って習字うまいのかな。
今宵の女子っぽい字を頭に浮かべる。


今宵はすぐそこの自分の教室に入って荷物を持ってくると「待っててね……!」と大慌てで更衣室に向かって走っていった。


俺はそんな後ろ姿を笑いながら見届けているっていうわけで。


そんな慌てなくても。
……誰も逃げねーよ。


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