【完】俺様彼氏は、甘く噛みつく。
でも、あたしも音羽くんとのことは覚えてるって、少しくらい伝えないといけないと思って、言ってみた。
「あの本……新刊でたよね」
「うん。衣川さんはもう読んだ?」
優しい目はほそまって、
「まだ途中だけど……」
小さなあたしの声を待っていてくれる。
「俺も」
穏やかな空気に包まれるような感覚。
その時。
「へー、いい雰囲気じゃん」
後ろからぎゅっと抱き着かれて、甘い香水の匂いを感じた。
「……駆くん」
その瞬間、穏やかな空気は一変して、緊張とドキドキに塗り変えられる。
「ふたりの世界にでもはいろうとしてた?」
上から咎める不機嫌な声。