【完】俺様彼氏は、甘く噛みつく。
梅雨真っ只中の蒸し暑い廊下。


着替えの入ったカバンにタオルが入っているから、カバンごと持って水道へむかった。



「災難だったね」


控えめながらも笑い混じりの音羽くん。


……音羽くんってこんなに笑うんだ。


きゅっと蛇口をひねったとき、チャイムが鳴った。



授業終了の合図とともに、いろんなクラスから人が出てきてしまったし、
この格好ちょっと恥ずかしい。



「体操着の汚れ、落ちるかな」


「衣川さんのは派手にかかったからちょっと……落ちないかもね」



そう言われて体操着を見下ろす。


胸の下からお腹にかけて太いレールのように伸びた真っ黒な線。



「たしかに……むりだよね。高橋君の勢いすごかったもんね」


さっきのことを思い出してつい笑っていると。



「あれ? 今宵じゃん」



その声がしてドキッとした。



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