【完】俺様彼氏は、甘く噛みつく。
ーーツン。

とベストの裾が引っ張られた。


「衣川さん、堂々と見学しすぎ」


あたしが寄りかかっているギャラリーの塀に背を向けて座っている音羽くんはスマホゲームをしていて。


「ばれちゃうよ?」と彼に注意された。


「あっ、本当だね」


慌てて隠れるように頭をひっこめる。


って、違う!
音羽くんのことすっかり忘れてた……!


「ごめんなさい、音羽くん!先に教室戻ってて?」


「えー、だるい。一緒にさぼらせて」


あたしを見あげる上目遣いはまるで捨てられた子犬のようだ。


「えと……うん。わかった」


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