【完】STRAY CAT
「朝の、誰も好きになったことねえってやつ。
あれ、絶対嘘だろ? 本当はあるだろ?」
「っ、」
「お前のことどんだけ見てると思ってんだよ。
……そこでなんかあったの、まるわかりだから」
なぜか、泣きそうになる。
整理できない感情に薄くくちびるを噛んだけど、油断したら本当に泣きそうだった。
「蒔のこと大事にしてるのはわかってる。
そうやって頑張ってるお前のこと見てた」
どきっ、と心臓が跳ねる。
うれしかった。
わたしのことをちゃんと見てくれて、わかってくれて、それでも好きだって言ってくれてるから。
だけどわたしは、絶対にハセを選べない。
自分の未来に、期待なんてしたくない。
「……付き合おう。鞠」
「……ハセ」
胸元から手をはなして、ぎゅっと両手を握る。
相手はハセなのに、ちょっとだけ、緊張した。
「保留にさせて。
……返事、ちゃんと、考えさせてほしいの」
期待するのはもうやめた。
……だけど、きっと、ハセなら。
だいじょうぶなんじゃないかって。
ただそんなふうに、浅ましくも思っただけで。