COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
*

メッセージで送ってもらった位置情報を元に歩く。

こんな道だったんだ、と改めて周りの景色に目をやる。
よく言えば都会らしい、悪く言えば肩肘を張ったお店や家、マンションが並ぶ。

住めば都、という言葉があるが、きっとこんなキラキラした街に似合うのはヒロインみたいな女性。

端から見たら、私にはきっと不似合いなんだろう。

そんなことを考えているうちに前回ここを訪れた帰り道、
自動扉を抜けて見上げたそれが目の前に現れた。


自動扉を抜けると、聞いていた部屋番号を呼び出す。
すると、すぐ隣で鍵が開錠する音がした。


エレベーターへ乗り込むと、

ここまで歩いてきたことも、彼の部屋へ向かっていることも
私の意志ではないような、不思議な感覚に陥った。

それはもちろん、私の意志であることには間違いないのだけれど。


部屋の扉が開くと、彼が顔を覗かせた。

『昭香さん、いらっしゃい』

ドアノブに手をかけたまま、微笑む。
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