COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
恰好はここに来た時のまま。
ざらりとしたブラウスの感触が少し気持ち悪い。
その時、寝室に微かな光が差し込む。
恐らくリビングの照明の残光であろうその光は、徐々に広がって消えていく。
気配を感じて、咄嗟に目を閉じる。
楓だ。
すぐにそれに気付いたのに、その時何故目を閉じたのか
私にもよくわからなかった。
けれど今はただ心を閉じて、ここに横たわっていたいからなのかもしれない。
間接照明が灯ったのだろうか、閉じた目にじわっと光が当たる感覚がした。
ベッドが少しだけ沈むと、囁くように小さな声が聞こえる。
『…昭香さん?』
ふっと大きな手が優しく耳に触れる。
『…外すよ』
そう言って彼は私のピアスをそっと外した。
ぎこちなく触れられる耳がくすぐったい。
けれど狸寝入りをしてしまった今、起きるわけにはいけない気がした。
少しして、閉じた目に再び暗闇が戻ってくる。
これ以上寝たフリを続けるのも辛かったので、ホッと胸をなでおろす。