COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―

「…ごめんね、企画に引き継いだら営業は基本手を出せない事になってて。

でもうちの企画はすごく優秀だし、信頼してますので」

彼女は、そっか、と一言残念そうに呟く。


「僕とは違う目線で考えてくれたりするから、すごいなって。

今回の企画の提案会議、これでもかなり楽しみにしてるんですよ」

俯いたままの彼女の顔を覗き込むと、目が合う。

『…わかりました、そんな風に言ってもらえたら頑張るしかないですよね!

楽しみにしててくださいね!』

そう言った彼女の表情は、先程とは打って変わって華やぐ。

「よろしくお願いしますね」

僕の返事に、微笑み返すと彼女はオフィスへと戻って行った。

こういう時のかわし方も随分と上手になったと我ながら思う。

仕事量が増えるのはもちろん、こういう”テ”のものをホイホイ受けていたら身が持たない。

振り返り、再び廊下を歩き始める。


“王子”ねぇ…
そんな柄でもないんだけど。

本当の僕は、皆の考える清廉潔白な王子様からは程遠い。

それに僕は“王子”になりたかったわけじゃない。


あの人の隣に並びたい。

ただ、それだけ。
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