COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
すると背後、入り口から誰かが入ってくる気配を感じて横目で振り返る。
目が合うと、その相手はみるみる驚いた顔になった。
『…昭香さん』
「楓…」
互いに名前を呼ぶと、息苦しい沈黙が訪れる。
沈黙を破ったのは、彼だった。
『…何度もメッセージ送ったんですけど、見ました?』
「いや…あの」
忙しくて。そんな言い訳が口をつきそうになるのをぐっと堪える。
そんなその場しのぎの言い訳をして、何になるというんだろう。
もうこんな関係やめにしないといけない。
『昭香さん』
彼は私の名前を呼ぶと、指を絡ませるように私の手をとった。
咄嗟にその手を振り払うように引っ込める。