COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
私は今日オードブルのオーダーをしに来た。
それは間違いではない。
けれど彼に流されるまま、このまま注文だけを済ませて帰って本当いいのだろうか。
私は後悔しないのだろうか。
頭の中で自問自答を繰り返す。
けれどそんな事を考えている地点で、もう既に答えは出ているんだ。
奥歯にぐっと力を入れると、顔を上げた。
「…さっき」
『はい?』
顔を上げた彼と再び目が合う。
「嫉妬…してたの。
他の女の子に笑いかける春田くんを見て」
彼は驚きを隠せない様子で目を見開いたまま、私の言葉を黙って聞いている。
静かな、まるで時が止まったような沈黙。
その時、
この店にBGMがかかっていないことに、初めて気が付いた。
いつも彼の明るい声がこのお店を温かく彩っていた。
このお店だけじゃない。
彼がそこにいれば、いつだって心が温かくなった。