COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―

『え……

ちょ、ちょっと、待って!
今、なんて…』

目の前、明らかに動揺している彼。
彼の大きな手を見つめると、ゆっくりと触れた。

その手を握ると、ピクリと反応する。

「春田くんのことが好き…」

彼はもう片方の手で口元を覆うように隠した。
よく見れば、その顔は真っ赤に染まっている。

『……ほんと夢、みたいだ』

そんな彼の姿に胸が甘く高鳴る。
でも、私にはもう一つ彼に伝えなければいけない事がある。

「…あのね、私、もう一つ春田くんに言わなきゃいけないことがある」


私が、かつて家庭を持っている人と付き合っていた事。
“忘れられない人”というのはその彼だという事。

そして未だにその亡霊に苦しんでいて、ついこの間その彼から連絡が来たという事。

まるで物語を聞かせるように、私はただ淡々とそれを話した。

そうして気を張って、感情を一定に保とうとしていなければ
私は、自分に対する嫌悪感で今にも叫び出しそうになっていた。
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