COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
『少し早いけど…今日は閉店です』
振り返った彼はそう言うと、どこか切なげに微笑んだ。
彼は再びカウンターの戸を抜けると、私の前に立った。
「…ごめんね、せっかく好きだって言ってくれたのに。
こんな最低な女で」
「でも春田くんを好きだって言った言葉は本当…」
顔を上げるのと同時、彼の優しい腕が私を抱き寄せた。
『言ったはずです。
嫌いになろうとしたって、できないって』
「でも…」
彼は抱き締めたその力を少し緩めると、私の顔を覗き込んだ。
その真剣な瞳に、心が震える。
『これからは、俺だけを見てればいいですから』
私の腰に回された大きな手に、私は初めて応えた。
彼の胸に顔を埋めるように身体を預けると、どこからかこみ上げてきた気持ちに
子供のように泣き出したくなるような衝動に駆られた。