COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
『花緒先輩がいたから、私はあの時オフィスに居られたんです』
私は昭香さんのように誰かの背中を押す力も、優香ちゃんのようにまっすぐな言葉で胸の中にある想いを伝える勇気もない。
けれどそこに私がいる理由は確かにあって、それをわかってくれる人達に囲まれている。
「…ありがとう」
『えー!なんでそうなるんですか!
あ、さては花緒先輩、酔ってますね!!』
彼女の幸せそうな笑顔が、二人の間に流れる空気を伝うようにして私にうつった。
その時、窓の外姿を現したその建物に気付くと、私は運転席に座る背中に声をかけた。
「あ、私ここで降りるので」
『え?花緒先輩、帰らないんですか?』
理央ちゃんが目を丸くして言った。
「ナイショ、です」
『えー!?!?』
少しだけでも説明をしたいところだけれど、
車はそんなことはお構いなしに路肩にゆっくりと停車した。