COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―

それに異性にこういった物を選ぶのは、実の父親宛てでもない限り少し抵抗がある。
小さく唸りながら、どう断ろうか必死に考えていると彼が再び口を開いた。

『…深い意味はないです。

昭香さんになら頼みやすいだけですから、気楽に選んでくださいよ』

ちらりと見た彼の表情から他意が感じられないのは、営業マンならではのポーカーフェイスからか、それとも本当にそうなのか。

どちらにせよここまで頼み込まれると、ここで断って立ち去る事は私には出来ない。

その時、ふと落ち着いたブラウンのネクタイが目に入る。

上品な光沢のあるブラウンの生地に、クリームベージュの4本線の細い斜めストライプ模様が間隔をあけて入れられている。

彼がよく着ているネイビーのスーツにもよく似合いそうだ。
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