COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
『私、今日お昼少しだけ出てきてもいい?』
『はい、わかりました』
花緒先輩の返事に、ごめんねと一言言い残すと、昭香先輩はこちらへ向かって歩いてくる。
『優香、本当によかったね。私も嬉しい』
その長くて綺麗な指が私の肩にそっと触れると、昭香先輩は小さな声で言った。
『じゃあ、ちょっとよろしくね!』
いつもの明るい声がオフィスに響くと、昭香先輩はオフィスを出ていった。
ガチャン、と音を立てて閉じた扉を見つめると、心臓がぎゅっと痛くなる。
もし私がもっと気の利いた事を言える人間だったら、何か変わっていたのかもしれない。
私が昭香先輩の為に出来ることは、本当に一つもないのだろうか。
『…大丈夫ですかね?今朝からどうも元気がなくて』
理央が心配そうな眼差しで、扉を見つめながら言う。