素直になれない夏の終わり

「そんなことだから、脈があるんだって津田に思われるのよ」

「いや、そもそも津田くんは、私が津田くんのことを好きだっていう根拠のない謎の自信を持ってるから、万が一嫌いだってはっきり言っても信じないよ」


試したことはないけれど、夏歩はそんな気がしていた。


「夏歩には根拠がないように見えても、津田には案外ちゃんと根拠があったりしてね」

「だとしても、それは勘違いだから」

「でも嫌いではないんでしょ?」

「…………」


夏歩が返答に困って黙り込んだら、美織は可笑しそうに笑って、袋にしまったチョコレートの箱を再び取り出した。


「眉間に皺寄せて仕事するのはどうかと思うわよ、夏歩さん」


夏歩は、差し出された箱に視線を落とす。

ミルクティーとミルクチョコの部分に一つ分の隙間が空いていたので、なんとなく隙間のない方のチョコレートを見比べる。

悩んだ末に「……いただきます」と、夏歩はキャラメル味を摘まんで口に入れた。
口の中に、甘さとほろ苦さが広がっていく。



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