素直になれない夏の終わり

「もう……お弁当洗うから出してって言ったでしょ。起きて、なっちゃん」

「……寝てない、ちょっと横になってるだけ」

「どっちでもいいから起きて」


うつ伏せでベッドに寝転んでいた夏歩の背中に手を載せて、津田は容赦なく左右にぐらぐらと揺する。

鬱陶しさに渋々夏歩が顔を上げると、揺れもピタリとおさまった。


「ほら、早くお弁当出して。あと、さっき先にお風呂入るって言ったよね。早く行ってきてくれないと、いつまで経っても夕飯が食べられないんですけど」


そう言えば、本日も夏歩が帰宅すると既に当たり前のようにキッチンにいた津田に、お風呂か夕飯かと聞かれて先にお風呂と答えたような気がする。

うんとも、んーともつかないような返事をしながら、夏歩はもぞもぞとベッドの端まで移動すると、そこから鞄に向かって腕を伸ばす。


「……起き上がればいいのに」


呆れたような津田の声を聞き流しながら、伸ばした手で鞄の中を探り、ランチバッグを引っ張り出すと、それを津田に向かって突き出す。
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