素直になれない夏の終わり
津田が受け取ったところで夏歩の腕はそのまま下に落ちてベッドからだらりと垂れ下がり、ついでに頭もぽてっと縁ギリギリに落ちる。
向きは違えど、最初とほとんど変わらないうつ伏せの体勢に戻った夏歩に、津田は「……なっちゃん」とまた呆れたように呟いた。
「……わかってる。今起きる」
“今”とは言ったものの、しばらくそのままうつ伏せでいると、唐突に後頭部にぽんっと手が置かれた。
その手は、手の平全体でわしゃわしゃとかき回すように撫でたかと思ったら、今度は乱れた髪を直すように優しく梳いていく。
わしゃわしゃと撫で回されるのは髪がぐしゃぐしゃになるので好かないけれど、梳くような撫で方は嫌いじゃない。
でも、そうやって撫でている人物が津田である以上浸ってもいられず、夏歩は顔を上げて軽く睨んだ。
「……なに」
「いや、別に。強いて言うなら、あまりにも無防備だったから。後頭部が」