素直になれない夏の終わり
後頭部は基本無防備だと思うのだが、それについて今から津田と話し合うつもりはないので、夏歩はようやく体を起こしてベッドの上に座った。
自然と、頭に載っていた津田の手も離れていく。
「……津田くんのせいでぐしゃぐしゃ」
触れられていたところに手を当てて、夏歩は抗議するように津田を見る。
実際は、ぐしゃぐしゃに撫で回されたあとにちゃんと梳いて直してくれたのでそんなに酷くもないのだが、一瞬でも浸ってしまったことを誤魔化すように、抗議の視線を向けておく。
「朝のなっちゃんよりは全然マシだと思うよ」
失礼極まりないことを笑顔で言い放った津田は、「早くお風呂に行っておいで」と夏歩を急かしてからキッチンに向かった。
ランチバッグから取り出した弁当箱を洗う背中をしばらくぼんやりと眺めたところで、夏歩もようやく動き出す。
部屋着とクローゼットから出した新しい下着を持って、お風呂場へ。
「あっ、なっちゃん。バスタオル洗濯したから、新しいの出しておいたよ」
追いかけてきた声に、既に廊下に出ていた夏歩は疑問を覚えて、一歩後退して部屋に戻る。