素直になれない夏の終わり

「それでも、財布の扱いって言うか管理の仕方は、もう少し気を遣ったほうがいいと思うけど」


夏歩としては、そんなに雑に扱っている覚えはないのだが、まあ鞄をちょっとばかし雑に放ったり床に落としたりすることはあるけれど。

今回鞄から中身が飛び出していた理由はおそらく、ベッドから腕を伸ばしてランチバッグを引っ張り出した拍子に倒れたのだろう。


「それに、ちゃんとしまっておかないと、出る時になってからあれがないこれがないなんてことになりかねないよ」


わかってる……と鬱陶しそうに夏歩が返すと、津田がキッチンから白い器を二つ手にしてやって来る。

既にテーブルの上に用意されているのはスプーンとフォークで、その前に津田は持ってきた器を置いた。

器の白に、スープの赤がよく映えている。


「……これも持って来たの」


見たことのないその器は、夏歩が買ったものではない。とくれば、また津田が家から持って来たのだろう。
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