素直になれない夏の終わり
「やっぱり、ニンニク入ってた方が美味しいね」
これはなんと答えても同意した時点で美味しいと言っているようなものではないかと思ったら、夏歩は返事が出来なかった。
津田は別に気にした様子もなく、まるでさっきのは独り言であったかのように話を続ける。
「ほんとはもう少し豪華な具を入れたかったんだけどね。エビは頭付きで、ホタテはぷりっと大ぶり、イカは刺身でも食べられるような新鮮なやつ」
「……それは普通にお刺身で食べたい」
それだけのいいものを、美味しくなるとわかっていてもスープスパゲティの具にしてしまうのはもったいない。
「なっちゃんは刺身が食べたいの?わかった、じゃあ今度買ってくるよ」
「……話、聞いてた?」
“食べたい”とはそういう意味ではないことくらい、話の流れでわかるだろう。
もちろん、聞いてたよ。なんて言って笑う津田の相手をするのが面倒くさくなって、夏歩はそれ以上何も言わなかった。
夕飯が終わると、津田は空になった食器を夏歩の分も重ねて持って立ち上がる。