素直になれない夏の終わり
「はいはい、なっちゃん。大丈夫だから落ち着いて」
足早に近づいてくる音がしたかと思ったら、津田はワタワタしているだけの夏歩の後ろからコンロのスイッチに手を伸ばす。
「料理中にどうしたらいいかわからなくなったら、ひとまず火を止める。慌てず騒がず、まずは一旦火を止める」
言いつつ、津田は鍋の方の火を止めて、フライパンの方は弱火へと火加減を調節する。
続いて「はい、ちょっとごめんねー」と夏歩に持っていたドライヤーを渡して場所を交代させると、鍋の方には溶き卵を回し入れて余熱で火を通し、フライパンの方には皿に取り分けていたハンバーグを投入したうえで、水溶き片栗粉でとろみをつけていった。
その手際の良さに夏歩が見入っていると、フライパンの方も火を止めた津田が振り返る。
「さて、じゃあ先に乾かそうか。終わったらご飯にしよう」
言うが早いか夏歩の体をクルッと反転させた津田は、そのままコンセントの元まで背中を押す。帰宅した時同様に、有無を言わせずグイグイと。
「さっきのなっちゃん見てたら、高校の時の調理実習を思い出しちゃった。ほら、ムニエル作った時にさ、フライパン見ててってお願いして俺がお皿取りに行ったら、なっちゃんってば異様にワタワタして、さっきみたいに必死で俺のこと呼んでたよね」