素直になれない夏の終わり

「気に入って良かった。じゃあそっち、なっちゃんにあげる」

「え?あっ、ちょっと勝手に!」


夏歩の制止も聞かずにテーブルの上のグラスを手に取った津田は、すっかりそちらに権利をつけてしまう。


「津田くん、これまだ飲んでないでしょ。なんで頼んだのに飲まないの」

「まあまあ、細かいことは気にしない。飲んだことはあるから味は知ってるし」


そう言ってすっかり自分の物にしてしまったモスコミュールを飲む津田を、夏歩はぶすっとした表情で眺める。

おそらく津田は、夏歩がモスコミュールを一口飲んだ瞬間に、ほんの少し眉間に皺を寄せたのを見逃さなかったのだろう。津田とは、そういう男だ。


「なあに?なっちゃん。むすーっとしちゃって」

「……別に」


ありがとうと言うべきなのかもしれないけれど、津田にそんなつもりはなかったという可能性もゼロではないので、夏歩はふいっと視線を逸らす。そこに、ようやく美織が戻って来た。
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