素直になれない夏の終わり

「でも、あの調子でよく今まで一人で生きてこられたね。普通はほら、一人暮らしを始めたら必然的に自炊しないといけないから、多少は料理の腕が上がると思うんだけど。なっちゃんは変わらないもんね、高校の時から」


ドライヤーのスイッチを入れたことで、津田が声のボリュームを上げる。
必然的に、夏歩もボリュームを上げて言い返した。


「一人暮らしをしたら自炊しないといけないなんて、そんな時代は終わったの。食材買って料理するより、出来合いのものを買ってきた方が早いし、今は栄養面だって考えられてるから、自分で作るよりずっと体にいいし。今はそう言う時代になったって、知らないの?」

「時代を言い訳にしない。それに、早さとか栄養面とかは自分で作るよりいいかもしれないけど、金銭的には自炊した方がずっといいでしょ」


自炊をほとんどしない夏歩には、その辺り比較のしようがないけれど、ガス代や電気代、水道代に材料費と、全て含めて考えたらそれほど変わらないのではないかと思ったりする。

言ったらそこから津田のお説教が始まって、長くなりそうな気配がするので言わないけれど。


「なっちゃんにその気があれば、俺がいくらでも教えてあげるよ?そうだなあ……まずは、お味噌汁の作り方からでどう?」

「今のところ、その気がないので結構です。自分で作った味噌汁より、インスタントの方が断然美味しいし」

「練習すれば、インスタントより美味しく作れるようになるよ、きっと」
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