素直になれない夏の終わり
引っペがしてからずっと持っていた布団を離した津田は、今度は夏歩の両手首を掴んで無理やりにでも起き上がらせようと引っ張る。
「……腕が抜ける」
それが地味に痛くて訴えたら
「抜いて欲しくなかったら起きて」
とんでもない脅しが返ってきた。
本当に津田が腕を抜くとは思っていないけれど、夏歩は鬱陶しさに負けて嫌々体を起こす。
しかし津田はそれだけでは満足できないようで、夏歩がベッドから降りるまで手首を離さず、やっと離したかと思ったら洗面所まで背中を押された。
「あーもう、わかったってば!顔洗って支度すればいいんでしょ。もう、鬱陶しい」
洗面所の鏡越しに背後の津田を睨みつけると、「俺がいなくなった途端立ったまま寝るのとかなしだからね」と言い残して津田は立ち去った。
誰が寝るか、と呟いて、ひとまず夏歩は顔を洗って歯を磨く。
着替えは持ってきていなかったので、それだけ済ませて部屋に戻ると、テーブルの上には既に朝食が用意されていた。
テーブルの真ん中にどーんと置かれた大皿の上に、海苔に巻かれたおにぎりが四つ。
いつも、おかずも汁物もと何かの見本のようにキッチリとした朝食を用意する津田にしては珍しいと夏歩は思った。